中華人民共和国専利法
中華人民共和国専利法
制定(1984年3月12日第6期全国人民代表大会常務委員会第4回会議議決、1985年4月1日から施行)
改正(1992年9月4日第7期全国人民代表大会常務委員会第27回会議議決、1993年1月1日から施行)
改正(2000年8月25日第9期全国人民代表大会常務委員会第17回会議議決、2001年7月1日から施行)
改正 (2008年12月27日第11期全国人民代表大会常務委員会第6回会議議決、2009年10月1日から施行)
目 次
第一章 総則(第1条~第21条)
第二章 特許権付与の要件(第22条~第25条)
第三章 特許の出願(第26条~第33条)
第四章 特許出願の審査及び査定(第34条~第41条)
第五章 特許権の存続期間、消滅及び無効(第42条~第47条)
第六章 特許の強制実施許諾(第48条~第58条)
第七章 特許権の保護(第59条~第74条)
第八章 附則(第75条~第76条)
第一章 総 則
第1条
特許権者の合法的権益を保護し、発明創造を奨励し、発明創造の応用を推進し、創新能力を向上させ、科学技術の進歩と経済社会の発展を促進するために、本法律を制定する。
第2条
本法律において発明創造とは、発明、実用新案及び意匠をいう。
発明とは、製品、方法又はその改良について出された新しい技術案を指す。
実用新案とは、製品の形状、構造又はその組み合わせについて出された、実用に適した新しい技術案を指す。
意匠とは、製品の形状、図案又はその組み合わせ、及び色彩と形状、図案の組み合わせによって出された美観に富み且つ工業上の応用に適した新しいデザインを指す。
第3条
国務院専利行政部門は全国の特許業務の管理責任を有し、統一的に特許出願の受理及び審査を行い、法律に基づき特許権を付与する。
省、自治区、直轄市人民政府の特許業務管理部門は、その行政区域内の特許業務の管理責任を負う。
第4条
特許出願をした発明創造が国家の安全又は重大な利益にかかわり、秘密を保持する必要がある場合には、国家の関係規定によって処理される。
第5条
法律、社会の公徳に違反し、又は公共の利益を害する発明創造に対し、特許権を付与しない。
法律、行政法規の規定に違反して遺伝資源を取得し又は利用し、且つ当該遺伝資源によって完成された発明創造に対し、特許権を付与しない。
第6条
所属単位の任務を遂行し又は主に所属単位の物質的技術的条件を利用して完成させた発明創造は職務発明創造という。職務発明創造の特許を出願する権利はその単位に属する。出願が認可された後、当該単位が特許権者となる。
非職務発明創造において、特許を出願する権利は発明者又は創作者に属する。出願が認可された後、発明者又は創作者が特許権者となる。
所属単位の物質的技術的条件を利用して完成させた発明創造において、単位と発明者又は創作者とが契約を結んでおり、特許を出願する権利及び特許権の帰属に対し約定されている場合、その約定に従う。
第7条
発明者又は創作者の非職務発明創造特許出願に対し、如何なる単位又は個人もこれを妨げてはならない。
第8条
2つ以上の単位又は個人が共同で完成させた発明創造、又は一つの単位又は個人が他の単位又は個人に委託されて完成させた発明創造は、別段の合意がある場合を除き、特許を出願する権利は完成させた又は共同で完成させた単位又は個人に属する。出願が認可された後、出願した単位又は個人が特許権者となる。
第9条
同一の発明創造には1つの特許権のみが付与される。ただし、同一の出願人が同日に同一の発明創造について、実用新案特許出願と発明特許出願の双方を提出した場合、先に取得した実用新案特許権が未だ終止しておらず、且つ出願人は当該実用新案特許権を放棄する旨を声明した場合、発明特許権を付与することができる。
二以上の出願人が同一の発明創造について個別に特許出願した場合、特許権は最先の出願人に付与される。
第10条
特許出願権及び特許権は譲渡することができる。
中国の単位又は個人が外国人、外国企業若しくは外国のその他の組織に対して、特許出願権又は特許権を譲渡する場合、関連する法律、行政法規の規定に従って手続を行わなければならない。
特許出願権又は特許権を譲渡する場合、当事者は書面による契約書を締結し、国務院専利行政部門に登録し、国務院専利行政部門による公告をされなければならない。特許出願権又は特許権の譲渡は登録の日より効力が発生する。
第11条
発明特許権及び実用新案特許権が付与された後、本法律に別段の規定がある場合を除き、いかなる単位又は個人も特許権者の許諾を得ずに、その特許を実施してはならない。即ち、生産経営を目的にその特許製品を製造、使用,販売の申し出、販売、輸入すること、又はその特許方法を使用すること、及び、その特許方法で直接得られた製品を使用、販売の申し出、販売、輸入することができない。
意匠特許権が付与された後、いかなる単位又は個人も特許権者の許諾を得ずに、その特許を実施してはならない。即ち、生産経営を目的とした当該意匠の特許製品の製造、販売の申出、販売、輸入であってはならない。
第12条
いかなる単位又は個人が、他人の特許を実施する場合、特許権者と実施許諾契約を締結し、特許権者に特許実施料を支払わなければならない。被許諾者は契約書に定められていない他のいかなる単位又は個人に対して、当該特許の実施を許諾する権利を有しない。
第13条 (発明特許出願公開後の仮保護)
発明の特許出願が公開された後、出願人はその発明を実施する単位又は個人に適当な対価の支払いを請求することができる。
第14条
国営企業の事業単位の発明特許が、国家利益又は公共利益に対して重大な意義がある場合、国務院の関係主管部門及び省、自治区、直轄市の人民政府は、国務院の認可を得て、許可された範囲内で応用を広げることを決め、指定した単位が実施することを認めることができる。実施する単位は、国家の規定に従って特許権者に実施料を支払う。
第15条
特許出願権又は特許権の共有者が権利の行使に対して約定がある場合、その約定に従う。約定がない場合、共有者は単独で実施すること、又は他人に対して当該特許の通常実施を許諾することができる。他人に当該特許の実施を許諾する場合、取得した実施料は共有者間で分配しなければならない。
前項規定の状況を除き,共有される特許出願権あるいは特許権を行使するには、共有者全員の同意を得なければならない。
第16条
特許権が付与された単位は、職務発明をした発明者又は創作者に対し奨励を与えなければならない。発明特許が実施された後、その普及応用の範囲及び得られる経済効果に応じて、発明者又は創作者に対し、合理的な報酬を与えなければならない。
第17条
発明者又は創作者は、特許書類に自己が発明者又は創作者であることを明記する権利を有する。
特許権者はその特許製品又は当該製品の包装上に特許標識を明記する権利を有する。
第18条
中国に恒常的な居所又は営業所を有しない外国人、外国企業又は外国の他の組織が、中国に特許を出願する場合、その属する国と中国が締結した協定又は共に加盟している国際条約に従い、又は互恵の原則に従い、この法律に基づいて処理する。
第19条
中国に通常の居所又は営業所を有しない外国人、外国企業又は外国のその他の組織が、中国に特許を出願し及びその他の特許事務を行う場合、法に依って設立された特許代理機構に委任しなければならない。
中国の単位又は個人が、国内で特許を出願し及びその他の特許事務を行う場合、法に依って設立された特許代理機構に委任することができる。
特許代理機構は法律、行政法規を遵守し、依頼人の委任事項に従い、特許出願及び他の特許事務を行う。依頼人の発明創造の内容について、特許出願が既に公開又は公告されたことを除き、秘密保持の責任を負う。特許代理機構の具体的な管理方法は国務院により定められる。
第20条
いかなる単位又は個人が、中国で完成させた発明又は実用新案を外国に特許出願する場合、事前に申告して国務院専利行政部門による秘密保持審査を経なければならない。秘密保持審査のプロセス、期限等は国務院の規定に従って執行する。
中国の単位又は個人は、中華人民共和国が加盟する関係国際条約に基づき、特許の国際出願をすることができる。出願人が特許の国際出願をする場合、前項の規定を遵守しなければならない。
国務院の特許行政部門は、中華人民共和国の加盟する関係国際条約、この法律及び国務院の関係規定に従い国際出願をしなければならない。
本条第1項の規定に違反して外国に特許出願した発明又は実用新案に対して、中国において特許出願する場合、特許権を付与しない。
第21条
国務院専利行政部門及びその特許復審委員会は、客観、公正、正確、迅速の要求に照らして、法に従い、特許に関わる出願及び申請を取り扱わなければならない。
国務院専利行政部門は、特許情報を全面的、正確、迅速に特許情報を発布し、定期的に特許公報を出版しなければならない。
特許出願が公開又は公告されるまでは、国務院の特許行政部門の職員及び関係者はその内容について、秘密保持の責任を負う。
第二章 特許権付与の要件
第22条
特許が付与される発明及び実用新案は、新規性、進歩性及び実用性を有しなければならない。
新規性とは、当該発明又は実用新案が従来技術に属さず、またいかなる単位又は個人が同一の発明又は実用新案について、出願日前に国務院専利行政部門に出願されたことがない、かつ出願日以後に公開された特許権出願書類又は公告された特許書類に記載されていないことをいう。
進歩性とは、従来技術に比べて、当該発明には際立った実質的な特徴及び顕著な進歩を有し、当該実用新案が実質的な特徴及び進歩を有していることをいう。
実用性とは、当該発明又は実用新案が製造又は実施することが可能であり、且つ積極的な効果を生じるものをいう。
この法律でいう従来技術とは、出願日前に国内外において公衆に知られている技術を指す。
第23条
特許権を付与する意匠は、従来意匠に属してはならない。またいかなる単位又は個人が、同一の意匠について出願日前に国務院専利行政部門に出願したことがなく、かつ出願日以後に公告された特許書類に記載していないものでなければならない。
特許権を付与する意匠は、従来意匠と比べ、又は従来意匠の特徴の組合せと比べて明らかな区別を有するものをいう。
特許権を付与する意匠は、他人の出願日前に既に取得した合法的権利と抵触してはならない。
この法律でいう従来意匠とは、出願日前に国内外において公衆に知られている意匠を指す。
第24条
特許出願する発明創造が、出願日前の6ヵ月以内に、次に掲げる場合の一つに該当するならば、新規性は喪失しないものとする。
(一)中国政府が主催又は承認した国際展覧会において最初に展示した場合;
(二)定められた学術会議又は技術会議で最初に発表した場合;
(三)他人が出願人の同意を得ずにその内容を漏らした場合。
第25条
下記の各号に該当するものについては、特許権を付与しない。
(一)科学的発見
(二)知的活動の法則及び方法
(三)疾病の診断及び治療法
(四)動物及び植物の品種
(五)原子核変換の方法により得られる物質
(六)平面印刷物の図案、色彩又は二者の結合によって作り出された主に標識の作用を有するデザイン。
上記第(四)号に挙げた品種の生産方法については、本法の規定によって特許権を付与することができる。
第三章 特許の出願
第26条
発明又は実用新案の特許を出願する場合、願書、明細書及びその要約、並びに権利請求書等の出願書類を提出しなければならない。
願書には発明又は実用新案の名称、発明者の氏名、出願人の氏名又は名称、住所及びその他の事項が明記されていなければならない。
明細書には発明又は実用新案について、その技術分野に属する技術者が実施できる程度に明瞭で且つ充分に説明されていなければならない。必要な場合、図面を添付しなければならない。要約には発明又は実用新案の技術的要点を簡潔に説明しなければならない。
特許請求の範囲は、明細書に基づき、明瞭、簡潔に特許保護を求める範囲を限定しなければならない。
遺伝資源に依存して完成された発明創造については、出願人は特許出願書類においてその遺伝資源の直接的な出所及び根源的な出所を説明しなければならない。出願人が根源的な出所を説明できない場合、その理由を陳述しなければならない。
第27条
意匠特許を出願する場合、願書、当該意匠の図面又は写真及び当該意匠の簡単な説明等の書類を提出しなければならない。
出願人が提出する図面又は写真は、特許保護を求める製品の意匠を明瞭に示さなければならない。
第28条
国務院専利行政部門が特許出願書類を受け取った日を出願日とする。出願書類が郵送の場合、差出し日の消印の日付を出願日とする。
第29条
出願人は発明又は実用新案を外国で最初に特許出願した日から12ヵ月以内に、又は意匠を外国に最初に特許出願した日から6ヵ月以内に、同一主題について中国に出願する場合、当該外国が中国と締結している協定又は共に加盟している国際条約、又は相互に優先権を承認する原則により、優先権を享有することができる。
出願人が発明又は実用新案を中国に最初に出願した日から12ヵ月以内に、国務院専利行政部門に対して同一主題について特許出願する場合、優先権を享有することができる。
第30条
出願人が優先権を主張する場合、出願時に書面により主張し、3ヵ月以内に最初に特許出願した書類の謄本を提出しなければならない。書面による主張がなされていないか又は期限内に特許出願した書類の謄本が提出されていない場合、優先権の主張がなかったものと見なす。
第31条
一件の発明又は実用新案特許出願は一つの発明又は実用新案に限らなければならない。但し、一つの基本的発明構想から生まれた二つ以上の発明又は実用新案は、一件として出願することができる。
一件の意匠特許出願は一つの意匠に限らなければならない。但し、同一製品の二つ以上の類似する意匠、又は同一の分類に用いられ、且つ一組として販売又は使用される製品の二以上の意匠は、一件の出願として出願することができる。
第32条
出願人は、特許権を付与される前はいつでも、その特許出願を取り下げることができる。
第33条
出願人は当該特許出願の書類について補正することが出来る。但し、発明及び実用新案の特許出願書類についての補正は原明細書及び権利請求書に記載された範囲を超えてはならず、意匠の特許出願についての補正は原図面又は写真に示された範囲を超えてはならない。
第四章 特許出願の審査及び査定
第34条
国務院専利行政部門は発明特許出願を受理した後、方式審査にて本法の要件を満たしていると認める場合は、出願日から満18ヵ月で公開する。国務院専利行政部門は出願人の請求に基づきその出願を早期に公開することができる。
第35条
発明特許出願は出願日から3年内に出された出願人の請求に基づき、国務院専利行政部門はその出願について実体審査を行う。出願人が正当な理由なく期間内に実体審査を請求しない場合、その出願は取下げられたものと見なされる。
国務院専利行政部門は必要と認める場合は、職権で発明特許の出願について実体審査を行うことができる。
第36条
発明特許の出願人は実体審査を請求する場合、その発明に関係する出願日前の参考資料を提出しなければならない。
発明出願が既に外国に出願されている場合、国務院専利行政部門は出願人に指定期間内にその国がその出願の審査で検索した資料又は審査結果の資料の提出を要求することができる。正当な理由なく期限内に提出しない場合は、その出願は取下げられたものと見なされる。
第37条
国務院専利行政部門は発明特許出願について実体審査を行った後、本法の規定を満たしていないと認めた場合は、出願人に指定された期間内に意見を陳述させ、またはその出願について補正するよう通知しなければならない。正当な理由がなく期間を経過しても答弁しない場合、その出願は取下げられたものと見なされる。
第38条
発明特許出願について出願人が意見を陳述又は補正した後、国務院専利行政部門が依然として本法の規定を満たしていないと認める場合は、拒絶しなければならない。
第39条
発明特許出願が実体審査で拒絶すべき理由がなかった場合は、国務院専利行政部門は発明特許権の付与を決定し、発明特許証を発行し、同時に登録及び公告する。発明特許権は公告の日より効力が生じる。
第40条
実用新案及び意匠特許出願は、方式審査で拒絶すべき理由がない場合、国務院専利行政部門は、実用新案権又は意匠権の付与を決定し、それぞれ特許証を発行し、且つ登録及び公告する。実用新案特許権及び意匠特許権は公告の日より効力が生じる。
第41条
国務院専利行政部門は特許復審委員会を設置する。特許出願人が国務院専利行政部門の出願拒絶査定に不服がある場合、通知を受け取った日から3ヵ月内に特許復審委員会に再審を請求することができる。特許復審委員会は再審をして決定し、特許出願人に通知する。
特許出願人は特許復審委員会の決定に不服のある場合は、通知を受領した日から3ヵ月内に人民法院に訴訟を提起することができる。
第五章特許権の存続期間、消滅及び無効
第42条
発明特許権の存続期間は20年、実用新案及び意匠特許権の存続期間は10年とする。いずれも出願日から起算する。
第43条
特許権者は特許権を付与されたその年から年金を納付しなければならない。
第44条
次の各号の一つに該当する場合は、特許権は存続期間満了前に消滅する。
(一)規定による年金を納付しない場合;
(二)特許権者がその特許権の放棄を書面で言明した場合。
特許権の消滅は、国務院専利行政部門によって登録及び公告される。
第45条
国務院専利行政部門が特許権を付与することを公告した日より、いかなる単位又は個人もその特許権の付与が本法の関連する規定に満たさないと認める場合は、特許復審委員会にその特許権が無効であることを宣告するように請求することができる。
第46条
特許復審委員会は、特許権無効の宣告請求について速やかに審査及び決定を行い、且つ請求人及び特許権者に通知しなければならない。特許権無効の宣告の決定は、国務院専利行政部門によって登録及び公告される。
特許復審委員会の特許権無効の宣告又は特許権維持の決定について不服がある場合は、通知を受領した日から3ヵ月内に、人民法院に訴訟を提起することができる。人民法院は無効宣告手続きの相手側当事者に通知し第三者として訴訟に参加するように通知しなければならない。
第47条
無効が宣告された特許権は、始めから存在しなかったものと見なされる。
特許権無効の宣告の決定は、特許権無効の宣告前に人民法院により既に出された特許権侵害の判決、調停書、既に履行又は強制執行された特許侵害紛争処理決定、及び既に履行された特許実施許諾契約と特許権譲渡契約に対して、遡及力を有しない。但し、特許権者の悪意により他人に損害をもたらした場合は、賠償しなければならない。
前項の規定にしたがって、特許権利侵害賠償金、特許実施料、特許権譲渡料を返還しないことが、明らかに公平の原則に違反する場合は、全部又は一部を返還しなければならない。
第六章 特許の強制実施許諾
第48条
次に掲げる場合の一つに該当する場合、国務院専利行政部門は実施条件を備えた単位又は個人の請求に基づき、その発明特許又は実用新案特許を実施する強制許諾を与えることができる。
(一)権利付与された日から満三年間、かつ特許出願日から満四年間、特許権者が正当な理由なくその特許を実施せず、又は実施が不十分である場合;
(二)特許権者の権利行使した行為が法により独占行為であると認められ、当該行為の競争に対して生じた不利な影響を取り除き又は減少させる場合。
第49条
国の緊急事態又は非常事態が発生した場合、または公共の利益のために、国務院専利行政部門は発明又は実用新案特許を実施する強制許諾を与えることができる。
第50条
公共の健康を目的として、特許権を取得した薬品に対し、国務院専利行政部門はその製品の製造及びそれを中華人民共和国の加盟する関係国際条約の規定に符合する国家及び地域に輸出する強制許諾を与えることができる。
第51条
特許権を取得した発明又は実用新案が先に特許権を取得した発明又は実用新案と比較して、顕著な経済的意義を有する重大な技術上の進歩があり、その実施が先の発明又は実用新案の実施に依存している場合、国務院専利行政部門は後の特許権者の請求に基づき、先の発明又は実用新案を実施する強制許諾を与えることができる。
前項の規定に従って強制許諾を与えた状況において、国務院専利行政部門は先の特許権者の請求に基づき、後の発明又は実用新案を実施する強制許諾を与えることもできる。
第52条
強制許諾にかかる発明創造が半導体の技術に関わる場合、その実施については、公共利益の目的及び本法第48条第(二)号の規定の状況に限られる。
第53条
本法第48条第(二)号、第50条の規定に基づき与える強制実施許諾を除き、強制許諾の実施は主に国内市場に供給することを目的としなければならない。
第54条
本法第48条第(一)号、第51条の規定に基づき、強制実施許諾を請求する単位又は個人は証拠を提供して、合理的な条件を以って特許権者にその特許実施許可を要求したにもかかわらず、合理的な期間内に許諾の取得ができなかったことを証明しなければならない。
第55条
国務院専利行政部門が行った強制実施許諾の決定について、速やかに特許権者に通知し、登録及び公告しなければならない。
強制実施許諾を与える決定には、強制許諾の理由に基づいて実施の範囲及び期間を規定しなければならない。強制許諾の理由が消滅し且つ再び生じない場合、国務院専利行政部門は特許権者の請求に基づいて、審査の後強制実施許諾の終了の決定を下す。
第56条
強制実施許諾を取得した単位又は個人は専用実施権を享有するものでなく、且つ他人に実施を許諾する権利を有しない。
第57条
強制実施許諾を取得した単位又は個人は特許権者に対して合理的な実施料を支払わなければならず、又は中華人民共和国の加盟する関係国際条約の規定に従って実施料の問題を処理しなければならない。実施料を支払う場合、その額は双方の協議に依る。双方間で協議が成立しない場合は、国務院専利行政部門が裁定を行う。
第58条
特許権者は国務院専利行政部門が下した強制実施許諾の決定に対して不服がある場合、特許権者及び強制実施許諾を得た単位又は個人が国務院専利行政部門が下した強制実施許諾の実施料に関する裁定に対して不服がある場合、通知を受領した日から3ヵ月内に人民法院に訴訟を提起することができる。
第七章 特許権の保護
第59条
発明又は実用新案特許権の保護範囲は、その権利請求の範囲の内容を基準とし、明細書及び図面は権利請求の内容の解釈に用いることができる。
意匠特許権の保護範囲は、図面又は写真に示されたその製品の意匠を基準とし、簡単な説明は、図面又は写真に示されたその製品の意匠に対する解釈に用いることができる。
第60条
特許権者の許諾を得ずに、その特許を実施し、即ち特許権侵害により紛争が起った場合、当事者の協議によって解決する。協議を望まない又は協議が成立しなかった場合、特許権者又は利害関係人は人民法院に訴えることができ、また特許業務管理部門に処理を請求することもできる。特許業務管理部門が処理する時、侵害行為が認められる場合は、侵害者に直ちに侵害行為の停止を命じ、当事者に不服がある場合は、処理通知を受け取った日から15日内に、?中華人民共和国行政訴訟法?に従って人民法院に訴訟を提起することができる。権利侵害者が期間内に訴えを起こさず且つ侵害行為の中止しなかった場合、特許業務管理機関は人民法院に強制執行を要請することができる。処理を行う特許業務管理機関は当事者の請求に応じ、特許権を侵害した賠償額の調停を行うことができる。調停が成立しない場合、当事者は?中華人民共和国民事訴訟法?に依って、人民法院に提訴することができる。
第61条
特許権侵害紛争が新製品の製造方法の発明特許にかかわる場合、同一の製品を製造する単位又は個人は、その製品の製造方法が特許方法と異なることを証明する書類を提出しなければならない。
特許権侵害紛争が実用新案特許又は意匠特許にかかわる場合、人民法院又は特許業務管理部門は、特許権者又は利害関係人に対して、国務院専利行政部門がかかる実用新案特許又は意匠特許に対して検索し、分析及び評価を行った上、作成した特許権評価報告書の提出を要求し、それを以って特許権侵害紛争を審理し、処分するための証拠とすることができる。
第62条
特許権侵害紛争において、被疑侵害人がその実施した技術又は意匠が従来技術又は従来意匠であることを証明する証拠を有している場合、特許権の侵害を構成しない。
第63条
特許を詐称した場合は、法により民事責任を負う他、特許業務管理部門は、その是正を命じかつ公告を行い、違法所得を没収し、違法所得の4倍以下の罰金を科すことができる。違法所得がない場合、20万元以下の罰金を科すことができる。犯罪を構成する場合、法により刑事責任を追及する。
第64条
特許業務管理部門は、既に取得した証拠に基づき、特許詐称に嫌疑のある行為を取り締まるとき、関係当事者を尋問し、違法に嫌疑のある行為に関する情況を調査することができる。当事者と違法に嫌疑のある行為の場所について現場検証を行い、違法に嫌疑のある行為に関する契約書、領収書、帳簿及びその他の関連資料を閲覧、複製することができる。違法嫌疑のある行為に関係する製品を検査し、特許を詐称したことを証明できる証拠を有している製品に対して、封印し又は差し押さえを行うことができる。
特許業務管理部門が法に基づき前項に規定する職権を行使するときは、当事者は協力しなければならず、拒絶や妨害をしてはならない。
第65条
特許権侵害の賠償金額は、権利者が権利侵害によって受けた実際の損失に基づき確定する。実際の損失を確定することが困難な場合は、侵害者が権利侵害によって得た利益に基づいて確定する。権利者の損失又は権利侵害者の得た利益を確定することが困難な場合は、当該特許実施許諾料の倍数を参考にして合理的に確定する。賠償金額には権利者が権利侵害行為を制止するために支払った合理的な支出も含まれるべきである。
権利者の損失、侵害者の得た利益及び特許実施許諾料のいずれも確定することが困難な場合は、人民法院が特許権の種類、権利侵害行為の性質と状況などの要素に基づき、1万人民元以上100万人民元以下の賠償を確定することができる。
第66条
特許権者又は利害関係人は、他人が特許権の侵害行為を実施している又は実施しようとしていることを証明する証拠を有し、もし直ちに制止しなければ、合法的権益が補填困難な損害を被るおそれがある場合、提訴前に関係行為の停止命令をとるよう人民法院に申請することができる。
申請者が申請を行う際に、担保を提供しなければならない。担保を提供しない場合は申請を却下する。
人民法院は申請を受理してから48時間以内に裁定を下さなければならない。特別な事情があって延長が必要である場合は、48時間を延長することができる。関連行為の停止を命じると裁定した場合、直ちに執行しなければならない。当事者は裁定に不服がある場合、1回の復議を申請することができる。復議期間は裁定の執行を停止しない。
人民法院が関連行為の停止命令措置を講じた日から15日以内に申請人が提訴しない場合は、人民法院はその措置を解除しなければならない。
申請に誤りがあったとき、申請人は被申請人が関係行為の停止によって受けた損失を賠償しなければならない。
第67条
特許権侵害行為を制止するため、証拠が滅失又は後に取得が困難となるおそれのある場合、特許権者又は利害関係人は提訴前に人民法院に証拠保全を申請することができる。
人民法院は保全措置を実施する際に、申請人に担保の提供を命じることができる。申請人が担保を提供しない場合は、申請を却下する。
人民法院は申請を受理してから48時間以内に裁定を下さなければならない。保全措置を講じると裁定した場合は、直ちに執行しなければならない。
人民法院が保全措置を講じた日から15日以内に申請人が提訴しない場合、人民法院はその措置を解除しなければならない。
第68条
特許権侵害訴訟の時効は2年とし、特許権者又は利害関係人が侵害行為を知った又は知り得たと考えられる日から起算する。
発明特許出願公開後特許権が授与される前に、当該特許を実施して適当な実施料を支払わなかった場合における、特許権者は実施料の支払いを求める訴訟の時効は2年とする。特許権者は他人がその発明を実施していることを知った又は知り得た日から起算する。但し、特許権者は特許権付与の前に既に知った又は知り得た場合、特許権付与日から起算する。
第69条
次の各号の一つに該当する場合は、特許権侵害と見なさない。
(一)特許製品又は特許方法によって直接得られる製品について、特許権者又は特許権者の許諾を得た単位、個人が販売した後、当該製品を使用、販売の申し出、販売、輸入する場合;
(二)特許出願日前に既に同一の製品を製造し、同一の方法を使用または既に製造、使用のために必要な準備をし、且つ従来の範囲内で引続き製造、使用する場合;
(三)一時的に中国の領土、領海、領空を通過する外国の輸送手段において、その属する国が中国と締結した協定、又は共に加盟している国際条約、又は互恵の原則に従って、輸送手段自体の必要上その装置及び設備に関係する特許を使用している場合;
(四)科学研究及び実験のためのみに関係特許を使用している場合;
(五)行政審査に必要な情報を提供するために、特許薬品又は特許医療器械を製造、使用、輸入した場合、及び専らそのために特許薬品又は特許医療器械を製造、輸入する場合。
第70条
生産経営目的で、特許権者の許諾を得ずに製造かつ販売された侵害製品であることを知らずに使用、販売の申し出又は販売した場合、その製品の合法的な出所を証明することができた場合、賠償責任を負わない。
第71条
本法第20条の規定に違反し外国に特許出願し、国家の機密を漏洩した場合、所属単位又は上級主管機関は、行政処分を行う。犯罪を構成する場合、法により刑事責任を追求する。
第72条
発明者又は創作者の非職務発明創造の特許出願権及び本法に定めるその他の権益を侵害した場合、所属単位又は上級の主管機関は行政処分を行う。
第73条
特許業務管理部門は社会に特許製品を推薦する等経営活動に関与してはならない。
特許業務管理部門は前項の規定に違反した場合、その上級機関又は監察機関は是正命令をし、その影響の除去し、違法収入がある場合は没収する。情状が重い場合は、直接の責任主管職員及びその他の直接の責任者に対し、法により行政処分する。
第74条
特許管理業務に従事する国家機関の職員及びその他の関係国家機関の職員は、職務怠慢、職権乱用、私利で不正を行って、犯罪を構成する場合、法に基づいて刑事責任を追求する。犯罪を構成しない場合、法により行政処分を行う。
第八章 附 則
第75条
国務院専利行政部門に特許出願及びその他の手続を行う場合、規定に基づき手数料を納付しなければならない。
第76条
本法は1985年4月1日から施行する。